(1)auの戦略とイー・アクセス買収の必要性
KDDIとソフトバンクは、子会社のauとソフトバンクモバイルが携帯電話事業で、競争関係にあるため投資戦略が重なるときがあります。auとソフトバンクモバイルはiPhone5のデザリングを行いますが、ソフトバンクモバイルは電波帯域に余裕がありませんでした。ソフトバンクモバイルはイー・アクセスの買収に失敗すれば、iPhone5のデザリングを積極的に推進できなくなるため、KDDIよりも積極的にイー・アクセス買収に動きます。
(2)イー・アクセスの買収交渉
KDDIに対してソフトバンクモバイルが、イー・アクセスの買収交渉に積極的だったことを孫正義イーアクセス買収の真相(5)でまとめましたので見てましょう。イー・アクセス筆頭株主の米ゴールドマン・サックス(GS)は投資回収を急ぎ、早くからKDDIに接触していた。GSの言い値は1株6万円とKDDIの想定と大きく隔たる。孫はそこを突き1株5万2千円を一発提示した。当時のイー・アクセスの株価の3.5倍だ。イー・アクセスの買収交渉を見ると、auは電波に余裕があると想定していたため、投資効果はあまり見込んでいなかった可能性がありますね。
auのiPhone5はパケ詰まりが話題になりましたが、電波帯域の不足によるものであれば、auはイー・アクセスを買収すべきだったという声が高まったかもしれないですね。
(3)ゴールドマン・サックス証券によるKDDIとソフトバンクの株式価格交渉
- ゴールドマン・サックス証券はKDDIに早くから接触
- ゴールドマン・サックス証券は1株6万円で株式売却を希望
- ソフトバンクは1株5万2千円で株式買収を提示
KDDIはauに対する買収価格を考慮して、1株6万円を提示しており、ソフトバンクはKDDIの提示価格よりも結果的に安くゴールドマンサックス証券から買収しています。
(4)KDDI田中社長の株式買収条件提示と失敗
対する田中も1株6万円を提示 、ただ条件をつけた。「買収までに本格的な資産評価をしたい」。
9月28日のイー・アクセス取締役会。「KDDIの条件を後日の評価引き下げのサインと見た」と関係者はいう。auとイー・アクセスの買収効果を見るために、資産評価を田中社長は提案していますが、イー・アクセスはよい印象を持たなかったようですね。
ゴールドマンサックス証券だけでなく、投資効率を見る時は、より短い期間で多くの利益を得ることが課題になります。auとの合併効果を検討するために、買収期間が延びることに対して、良い印象を持たなかったのは、この辺りの事情もあるかもしれないですね。
(5)auとソフトバンクモバイルの競争とイー・アクセス買収失敗
1日夕方の記者会見。千本はソフトバンクを選んだ理由を「スピード感」と語った。孫は後出しジャンケンに勝った。ソフトバンクが株式交換で取得するイー・アクセス全株式の評価額は1800億円。auとイー・アクセスの携帯電話事業統合が失敗した理由は、KDDIが提示した株式買収価格が安かったからではなく、ソフトバンクよりも意思決定が遅れたことが原因のようですね。
(6)auとソフトバンクモバイルのiPhone5販売戦略とイー・アクセスの買収
auとソフトバンクモバイルのiPhone5販売戦略とイー・アクセスの買収について、検討するとKDDIが買収に成功していればiPhone5販売はかなり有利に進めれていた可能性があります。- au iPhone5のデザリングのエリアは広く、スピードは速い
- ソフトバンクモバイル iPhone5のデザリングのエリアは狭く、スピードは通信余力がないため電波帯域の圧迫により全体の通信品質が低下のリスク